[BACK]

ベースモニター用ヘッドフォンアンプの製作

Update : 2016/10/11

特に野外で演奏する時、自分の楽器の音が聞こえにくい場合が多く...
と言う事で、モニター用ヘッドフォンアンプを製作してみました。
シミュレータが大活躍です(笑)。


回路図 Rev.1
回路図

ネットで色々調べて「CMoy回路」にしようかな、と思っていたところに、こんなサイトを発見。 テキサス・インスツルメンツ社のアプリケーションノートDouble The Output Current To A Load With The Dual OPA2604 Audio Op Ampを元にローブースト回路も組み込んだもので、ありがたく真似する事に(笑)。

とは言え、少しアレンジを。 ベースの出力インピーダンスが高いので、最初にFETで受けるようにしたのと、ローブーストは、その効果を可変出来るようボリュームに、という程度だけれど。 で、スルーアウトも必要なのだけど、直出しとFETバッファをかましたのと選べるようにしました。

周波数特性

LT Spiceでシミュレーション。 まずは負荷未接続の場合の周波数特性。 狙い通りに動いてますね。

周波数特性

ヘッドホンの等価回路をネットで拾ってきたので負荷として接続してみると... なんだろう、この周波数特性... 何かがおかしい...

出力波形

原因は、と言う事で、100Hzサイン波を入力した場合の出力波形を確認。 っと、ローブーストを利かせる程、下側がクリップしてる... それと、センターも下がってまずね。

仮想接地

センターも下がってる、と言う事で、オペアンプの仮想接地を確認。 原因がわかりました。 ローブーストを利かせる程、仮想接地の電圧が下がってますね。

仮想接地は抵抗分圧とコンデンサの手抜き回路でして(笑)。 見事にこれが原因でした。 手抜きはダメですね(笑)。

回路図 Rev.2
回路図 周波数特性 周波数特性

手抜き回路で何とかごまかせないかと定数をいじってみましたが、上手くいかず。 と言う事で、諦めて正しい設計へ(笑)。

テキサス・インスツルメンツ社に「TLE2426」というレールスプリッタを使った仮想グランド電源ICがあるので使ってみました。 SpiceモデルもあるのでLT Spiceに組み込んで検討開始。

単に抵抗分圧部分を置き換えてみると... あれれ、8KHzチョイしたあたりの特性がおかしい...

仮想グランドに流れる電流の周波数特性を見てみると... あぁそうか、オペアンプの出力に大きな負荷容量をつなげてる事になるからダメなんですね。 データシートにも記載がありました。

いかん、いかん。

回路図 周波数特性

と言う事で、デカップリングコンデンサを削除。 その他、カップリングコンデンサや、バスブースト回路のコンデンサ等、もう少し定数をいじって回路図完成! 周波数特性も問題ないようです。

しかしシミュレータがあって良かったです。

空芯ソレノイドコイル
ソレノイド・コイル ソレノイド・コイル

ヘッドフォン出力部に1uHのコイルと47Ωの抵抗が並列で挿入されていますが、このコイルを自作。

まぁ便利なもので、Web上には設計ツールがいっぱい転がっています。 その中で、ソレノイド・コイル設計ツールを使用して計算。 で、丸棒にエナメル線をクリクリ巻いて、上から接着剤をつけて固定しました。

測定器が無いのでわからなけれど、まぁだいたい1uHでしょう(笑)。

基板組立
基板部品面 基板半田面

他の部品は行き付けの電気屋さんで購入して、基板に実装。 グランドの引き回しには気を配りました。 まぁ今回はサイズに余裕があるので、比較的楽に実装出来ました。

しかし、外部への線材が多いですね。

ケース加工
パネル、ケース フロントパネル裏面

ケースはタカチ電機工業のアルミモバイルケース。 ジャックやボリュームやスイッチやらでフロントパネルはギッチギチですが、なんとか納める事が出来ました。

リアパネルは電池ボックスとDCジャック、電源スイッチです。 電池ボックスは内蔵蓋つきの良いケースが無かったので外付けです。 まぁ交換が容易に出来て、これはこれで良いのです(笑)。

総組立
総組立 総組立

いよいよ総組立です。 まずはシャーシに基板をスペーサを挟んでネジ止めしてガッチリ固定。 その後、ちょっと多い線材を間違えないように半田付けしていきます。 ボリュームはノイズ対策でアースをしっかり取りました。

そんなこんなで完成です。

完成...
完成?

パソコンから正弦波を入力して動作確認。 無事ヘッドフォンから音が出たので、ネジを締めて組み上げました。

で、次はベースを接続して実用確認を行ったのですが... あれれ、ボリュームをちょっと上げると歪が酷い... うーん、これではちょっと使用するのは厳しいです...

再変更
回路図

シミュレータに戻って原因を探っていたのですが... ふと、ネットで拾ってきたヘッドホンの等価回路が正しいのか、と。 実際に使用するヘッドフォンのインピーダンスを測ってみると... 全然小さい...

と言う事で単純に抵抗のみの負荷にすると、近い状態が再現できました。 やっぱり仮想グランド。 「TLE2426」では能力不足でした。 と言う事で、行きつけの電気屋さんで購入できる「NJM4556」を使って仮想グランドを生成するようにしました。 出力段のオペアンプも同じ型番に変更です。

基板修正
基板修正 基板修正

「TLE2426」を削除して、空いたスペースにオペアンプを入れてと。 どうしてもケミコンが入らず、ちょっと横にはみ出してしまいました。 なかなか修正は難しいですね。

なんとか修正し、動作もOkでした。

完成!
完成 完成

ベースを接続して確認。 改善したものの、ボリューム最大ではまだ歪みますが、まぁ実用上は問題ないレベルまでなったかなと。 音楽を聞く分には全然問題ないのですが、楽器は瞬間的なピークが大きいみたいですね。

完成 完成

実際に使用するときは、シザーバッグに入れて腰からぶら下げてます。 サイズピッタリ、じゃなくてシザーバッグに入るケースを選んだのですよ(笑)。 しかしまぁなかなか試行錯誤の連続でした。

東京に行くことがあったら秋葉原で、もっと電流が流せるオペアンプをあさってみようかな(笑)。 「NJM3414AD」なんかが良いらしいという情報も。


©みぞ